スタートアップのリアル

プレIPOくらいのスタートアップを経営しています。自分でお金を払ってでも知りたかった事を、無料のものはブログ、有料のものはnoteにまとめて発信しています。本名でやると色々書きづらい事もあるかなと思い、名前は本名ではありません。https://note.mu/satorutanaka5

年間数百名と面談するスタートアップ経営者が考える、スタートアップへの転職について(エンジニア編)

はじめに

スタートアップにおいて、採用は経営者のプライオリティのトップ3には入る、重要なテーマです。

私も自身で経営するスタートアップでは、年間1,000名弱の方と面接をして、20-30名の採用をここ数年続けています。

多くの方とお会いする中で、自分が候補者の立場だったらもっとこうしただろうな、こういう風に探せば最初からミスマッチが少ないだろうな、と思う事が少なくありません。

また同時に、多くの採用媒体、エージェントの方との接点もあり、どの媒体やエージェントが評判がいいか、スタートアップ側ではよく見ているかなどは自然に肌感覚が身についています。

実名でやっていると中々正直には書けないものですが、せっかく匿名でやっているので、自分がスタートアップを受ける側だったらこうやって企業を探すと効率が良い、またこんなレジュメの人はこういうフェーズの企業にマッチしやすい、企業側からみたエージェントの評判などをまとめてみたいと思います。

 

前回はビジネス系の方について書きましたが、今回はエンジニアの方々に向けて書きたいと思います。

私が経営する会社でも、全体の半分弱はエンジニアであり、年間10名以上の採用を行います。私はエンジニアの出身なので、ある程度土地勘がありますが、エンジニアの転職はビジネス系の転職とは全く異なるため、どの会社も苦戦しています。

 

ひとつ言えることは、エンジニアは引く手数多で売り手市場なのがここ数年続いてますので、しっかりと転職活動をすれば、エンジニアにとっては比較的選びたい放題になるのではないでしょうか。

 

 

フェーズごとのスタートアップの特徴

スタートアップへの転職、という意味では、大きく分けて3つくらいのセグメントに分けられるかなと考えているので、下記のようなセグメントでそれぞれ書いていければと思います。

 

シード/アーリーフェーズ

従業員数数名〜10数名、売り上げはまだないが、プロダクトのコンセプトやシードマネーの調達は終わっているフェーズ。

会社の課題としては、とにかくプロダクトの開発と初期のセールス、実際に売れる製品か見極めるPMFと呼ばれるフェーズなので、主にエンジニアやプロダクトマネージャー、セールスや事業開発といった職種の人材が求められます。

 

このフェーズで求められるエンジニアは、とにかく手を動かせて、プロダクトを作れる人です。というよりか、このフェーズでは全職種の中で、ほぼそういったエンジニアしか必要とされていないと言っても過言ではありません。

 

いくら売り手市場のエンジニアとはいえ、このフェーズでは社長でも3-500万円くらいの年収でやっているので、ジョインすると給与のマイナスは避けられません。

 

スキル的には主にサーバーサイド、今だと流行りはGolangやRailsなどですが、基礎がしっかりしているエンジニアであれば言語は問わず、活躍ができると思います。

 

まだあまり分業が進んでいないフェーズなので、サーバーサイドエンジニアだけどアプリも書ける、みたいな所謂フルスタックエンジニアが重宝されますが、このフェーズで書かれたコードはスピード重視のとにかくマーケットインすることが重視されて、数年後に負債と呼ばれることが多いです(笑)

 

 

 

 

ミドルフェーズ

従業員数で数十名〜60名程度、プロダクトはある程度完成されていて、PMFは達成されているので売上も伸びており、資金調達も数億〜10億円程度は完了しており、投資余力もあるフェーズ。

 

会社の課題としてはユニットエコノミクスの向上のための、営業プロセスの改善や、コスト削減、効率的なマーケティングなどができる人材が求められます。

 

エンジニア側では、とにかく早く作るフェーズから、徐々に今後の効率的な運用や、チーム開発のしやすさを重視するようになってきます。

 

この辺りからVPoEのようなエンジニアリングマネージャが活躍始め、コードが書けなくてもチーム全体のスループットを上げることが求められます。

 

私の経営する会社でもまさに起きたことですが、立ち上げの時のとにかく早く動くものを作りエンジニアリング、そしてサービスを安定運用するためのエンジニアリングは似て非なるもので、移行するタイミングを間違えると、高スピードで負債を作り上げてしまうので、このフェーズで社内にどんなエンジニアがいるかは、面談を受ける上で見極めた方が良いでしょう。

 

 

レイターフェーズ

 

従業員数100人以上、プロダクトのPMFも終わり、売上は10億以上、すでに黒字化しているか、黒字化しようと思えばできるようなフェーズ。

成長過程で組織の壁を越えてきているはずなので、ミドルマネージャーの育成や会社の評価制度などもしっかりできていて、あとはしっかり事業を伸ばしつつ、新規事業などを仕込んでいる会社も多くあるかと思います。

こういったフェーズで活躍するのは、経営企画や会計などのコーポレート系や新規事業を立ち上げれるような人材、上場に向けて内部統制含めた組織の体制をきっちり作っていけるような人です。

このフェーズに来れば年収1,000万もざらにいますし、収入面での不安はそこまでない一方、ストックオプションなども相当な結果を出すスーパーCXOクラスでない限りは、そこまでの比率をもらえないので、ダウンサイドが少ない分、アップサイドも限定的です。

私が経営している会社はこのフェーズにあり、一応過去にシード/アーリー、ミドルステージを経験してきているので、より実感のこもった内容をお伝えできるかと思います。

エンジニアでいうと、VPoEのような経営層と現場のエンジニアを繋ぐような役割がより重宝されます。単純なタスクマネジメントではなく、会社としての方向性を理解してメンバーとしっかりコミュニケーションを取ったり、組織への不満をいち早く吸い上げて経営層とクイックにコミュニケーションを取れるのも重要になります。

そのような信頼を勝ち取るために自身がしっかりとしたエンジニアであることは必須ですが、このフェーズで毎日手を動かしているのは稀で、コーディングとマネジメントやチーム作り/経営マターな仕事が半々なイメージでしょうか。

このような動きができるエンジニアは年収1,000万以上はかたいフェーズです。

また若手で基礎ができており、もっとスキルを伸ばしたいエンジニアにも、このフェーズがおすすめです。伸び盛りのスタートアップでレイターステージであれば、尖ったエンジニアと大人のエンジニアのバランスがそれなりに取れているので、勉強になることが多くありつつも、放置されることも少ない環境が多いと思います。 

 

 

 

ジュニア層のスタートアップ転職

 

では早速スキル別スタートアップ転職について書いていきたいと思います。

まずはじめにジュニア層、年収でいうと300-500万円のレンジで、新卒から社会人3-5年目くらいの年次の人の場合について説明したいと思います。

正直、即戦力重視のスタートアップにおいては、ジュニア層のスキル的なニーズは高くありません。

しかしながら、エンジニアはビジネス職と違い、ある程度の基礎があれば動くものを作ることはそこまで難しくないので、やる気さえあればジュニアレベルのエンジニアでも活躍できる余地はあるかと思います。

ちなみにこのフェーズではビジネス職同様、社長にツテがあるか、LinkedinWantedlyなどの大手サイトに登録しておくと、直接連絡がくるかもしれません。

 

正直このフェーズでは、スタートアップ側もあまりお金がないので、大手の媒体に登録しても、そもそもスタートアップ側が見ていないのて、とにかく無料のものがオススメです。

 

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Wantedlyの公式サイトより

 

 

ミドル層もまずはスカウト待ち

  

ビジネス系の職種と違い、エンジニアの場合はエージェントを介しての転職はほぼないのが現状です。

私の経営する会社でも、エージェントを介して転職したエンジニアは10%程度で、ほとんどは社員紹介(リファーラル)か、媒体に登録している人にスカウトを打ったケースに限られます。

年収が500万円以上のミドル層になると、色々なサイトに登録しておくだけで、多くの企業からのスカウトが届くかと思います。

上記のWantedlyはどちらかというとミドル層以下をターゲットに企業も考えてますので、ミドル層からシニア層に差し掛かっている方は、Greenなどの転職サイトがおすすめです。

実際に弊社ではミドル層以上のエンジニアの方を、Green経由で採用させて頂いておりますし、社外の人に話を聞いても、Greenに掲載している優良企業が多い印象が強いので、登録しておくと良いオファーがあるかもしれません。

 

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Greenの公式サイトより

 

ミドル層以上になれば、SESという選択肢も

 

ある程度のスキルがあれば、エンジニアの場合は社員にならずに、SES(常駐or半常駐型)で業務委託契約を結ぶというやり方もあります。

 

最近かなり増えてきている形で、弊社も1割くらいのエンジニアは常にオフィスに来つつも、契約体系は正社員ではなく業務委託という形のエンジニアがいて、活躍しています。

お互いに合わない時に、社員じゃないのですっきり辞められますし、興味がある会社を2社掛け持ちといったこともしやすいのが特徴です。

会社としても、社会保険など社員になると額面給与以上のコストが発生するのですが、そういったものがない代わりに額面も高めに出すことができます。

(会社やスキルによりけりですが、基本は80万円/月〜など)

 

また業務委託のため、もらった対価を個人事業主登録しておくことで家賃等を経費として相殺することもできて、税務上もメリットがあります。

 

弊社でよく使っているSES、半常駐型のサービスは、midworks さんです。

 

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midworks 公式サイトより引用

 

その他、ITプロパートナーズさんも毎月2名ほと定期的にエンジニアの方を派遣して頂いておりますが、非常に好評です。

エンジニアの新しい働き方として、フリーランスで企業に常駐or繁盛中で複数社掛け持ちというのは面白いかもしれません。

 

 

シニア層はハイエンドエージェントがオススメ

 

ジュニア〜ミドル層までは、エージェントに頼らなくても、良い媒体にさえ登録しておけば多くのスカウトやオファーが来る事はこれまで書いた通りですが、年収1,000万円前後のシニア層になると、少し毛色が変わってきます。

エンジニアの場合はシニアになればなるほど、自分でコードを書く分量は減ってきて、経営に近いマネジメント的な意思決定の仕事や、VPoEといった現場と経営層を繋ぐミドルマネジメントの仕事がほとんどになります。

そうなると、より経営層との相性や会社のフェーズとの相性が大事になってくるので、エージェントの介在価値が出てきます。

そのため良いエージェントに巡り会う事が、良い転職の鍵となるわけですが、意外と弊社でお世話になる機会が多いのが、リクルートエージェントです。

(登録後、シニア層であればリクルートエグゼクティブという会社で担当してくれる模様)

 

リクルートエージェント公式サイトより引用

 

 

その他、企業の口コミも見れるという意味では、転職会議エージェントも評判が良いです。

転職会議エージェントの公式サイトより引用

 

口コミを見つつ、専用のエージェントが転職をサポートしてくれるので、シニア層であればエンジニアの転職にも役立つのではないかと思います。

 

ちなみに会社としての理想を言えば、転職会議やopenworksで口コミを調べて、気になった会社には直接申し込んでくれるのが、一番有難いことには変わりませんw

 

 

 

スタートアップへの転職が決まったら

最後に、お互いの相性が良く転職が決まった後、よく転職までに有給が余っている何を勉強しておけば聞かれるので、良く答えるオススメを紹介しておきます。

正直一番良いのは有給捨ててでも早めにジョインして、業務になれることなのですが(笑)、もし時間がある場合には下記をオススメしています。

 

《書籍系》

起業のファイナンス

スタートアップ界隈ではバイブルと化していますが、スタートアップの資金調達、ストックオプションなどについての知識が一通り身につきます。

スタートアップのお金事情は大企業と大きく異なりますし、ストックオプションなどは特に知識格差があると感じるので、時間があれば業務と関係なくても読むのをオススメします。

 

THE TEAM 5つの法則

スタートアップを中心とした、組織コンサルティングを手がけるリンクアンドモチベーションの取締役を勤める麻野さんの著書です。

スタートアップの組織について精通しているので、どうやって効率的なチームワークを実現するか、現場感が理解できると思います。

 

THE MODEL

これは主にBtoB起業に転職する人の参考になるかと思いますが、スタートアップがどうやって最適な事業モデル、成長ドライバーを見極めていくかという話です。

教科書的なモデルを教えるのではなく、各社ごとに違うそのモデルをどのように見つけていくかの方法論を、実際の経験をもとに書かれていて非常にリアリティがあります。

 

 

その他のnote

※スタートアップのCEOの懐事情を赤裸々に描いてみました。

 

 

※日本のユニコーン企業の事業や資金調達分析はこちら。